忍者ブログ

投げやりとかじゃないです、決して。 誰でもみんな、思うままに、が理想のはず。

    

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

自衛隊の航空機パイロット採用試験を受ける際に、受験資格としていくつかの必須条件がある。その中の一つに「視力」が「裸眼」で一定以上の数値を満たしている、というのがあった。メガネやコンタクトレンズ着用の人は、その時点で対象外だった。

だった。というのは、今はそうではないからです。視力だけでなく体格などの基準も改定されました。理由は「パイロット志願者が減ったから」という、ちょっと後ろ向きな事情。

「条件」って、どこの世界にもありますよね。暗黙の条件。職業だけに絞って見てみても、「免許」とか「資格」だけじゃなくて「○○な人は良くて△△な人はダメ」みたいな。
「高所恐怖症のとび職」とか「血を見たら貧血起こす医者」とか、もうコントかなんかのネタになりそう。つまり向いてない、やっちゃいけない。
「心臓が弱い人はスポーツ選手を目指すな」本人がどんなに望んでも。五体満足で、負荷に耐えうる体を持つ人だけが目指せる。


何が言いたいのかと言いますと。
演劇もそういう意味では、限られた人のみの世界だなと。演技が上手いとかじゃなくてその前に、「どこも欠けていないこと」が前提。すごいヤな言い方をすれば、ある種特権階級の世界じゃないか。片足のない女優なんて聞いたことない。口が利けない役者は「口が利けない人」の役しかできない。今テレビや映画とかに出てる人たちも事故か何かで顔に消えない傷でもできれば、「顔に傷があっても不自然じゃない人」の役しかできない。あるいはもう人前に出られない。
なんて怖い世界だ。

と思ってた。そんで、自分がそうじゃないことを確認して安心するっていう「運が良くて良かった」みたいな「自分じゃなくてよかった」みたいな醜い感じ。なんだかなぁって思ってた。考えすぎかもしれないけど。

でも。
あれ、いつだったかなぁ。授業で「フランス映画を見てレポートを書く」っていう課題が出たので、リュック・ベッソンの『アンジェラ』を見ました。冴えない中年のおじさんが自殺しようとしたら、美女の天使が目の前に現れて救ってくれる話。まあそんな映画を見まして、レポート書こうとネットでその映画についていろいろ検索してみたら、その中年のおじさんを演じた俳優さんは「片腕のコメディアン」って肩書だったんですよ。
びっくりして。幼い時に事故か病気で右手を失くしたけどフランスでコメディアンやってて俳優もやってます、て。
えー!みたいな。もう一回映画を見直してみたら、上着で隠れてるけど確かに一度も右手使ってないんです。ヤクザみたいな人にぼこぼこにされても突き飛ばされても左手だけで庇って支えて。全っ然気付かなかった。片手が無いなんて。
できるんだ!ってね、思いました。なんだ、そういう例もあり得るんだ。日本じゃまず見ないけど。そっかーそういうのもあんだなぁ。


話変わってその後。
ある写真家さんのブログをいつもチェックしてるんですが、その人が紹介していたことがキッカケで、とある劇団『態変』というものの存在を知りました。「変態」という言葉を逆手に取ったかのようなネーミングそれだけで興味を引いたけど、詳しく見てみたら「身体障害者による劇団」だと言う。脳性麻痺や事故なんかで「身障者」と位置づけられた人が主催・作演・出演をこなす劇団。セリフは一切無し。宣伝のチラシの写真を見る限り、この人の足は恐らく機能していない。そんな劇団。
そんなのあったんだ。という感想。
「それで、何をするんだ?」もっと正直に言えば、「それで、何ができるんだ?」と思いました。長ったらしいくらいのセリフをしゃべって、必要ならば舞台上を走りまわって時には歌ったり踊ったり。それが演劇だと思ってたから。

じゃなんなんだ、最初っから「ストーリー性」を志向せずそのクセ「舞踏」でも「ダンス」でもないと銘打ってしまうこの集団は。
と思って土浦市まで見に行きました。
劇団「態変」『マハラバ伝説』主宰・金満里
観客の3分の1くらいは、恐らく身体障害者と思われる人とその付添らしき人。その時点でいつもの劇場と違う雰囲気。

開幕。いきなり「両腕の無い人」が登場、もだえている。その後「寝転がったまま起き上がれない人」「自力で歩けない人」やその他数人が登場、始まった。
休憩を挟んで、全部で二時間強くらいかな。ちょいと長く感じた。セリフが無いから余計に、ただひたすら「床に転がってうごめいている人」を見てるときは、何をどう受け取ればいいのか分からなかった。分からなかったから必然的に「これは何を表しているんだ?」「今の動きはきっとこういう意味…なのか??」など考えざるを得ないくらいだった。もしかしてそれも計算のうちなんだろうか。なんて。

あと、役者のおじいさんがフリフリのレースのスカートを穿いてブラジャーを付けてカツラをかぶって男を誘惑する場面。明らかにウケを狙ってるシーンだったのに客席がほとんどシーンとしていた時に感じた違和感。滑稽なんだから笑えばいいのに、「障害者」だから「笑っちゃいけないんじゃないか」みたいな空気に染まっちゃう居心地の悪さ。これも想定内なんだろうか、とも思ってしまったり。一人相撲並みにいろいろ考えてしまった。それでこの作者さん(役者でもある)は何を考えてたんだろうかと気になってしゃあない。

良い意味でも悪い意味でも頭がフル稼働してぐったりした時間でした。社会派なのかもしれない、メッセージが込められてたのかもしれない、でもそれをどう受け取るかは、ホントに、人による。私にとっては、「ああ、そんなパフォーマンスもあるんだな」という印象に終わったものでした。彼らが全面的に社会に訴えかけている思想に関して言うならば、それについて堂々と明言できるのは、本当に根の深いところからそれを理解できている人か、わかったフリをしている人のどちらかだと思う。だから私は何も言えないやと思った。ずるいけど。


とは言っても、もう一度見たいかと聞かれれば少し迷うけれど、見て良かったかと聞かれれば迷わず頷けるものでした。自らその世界に飛び込むまでの意思は無いけど、関わる機会があればぜひ覗いてみたい感じ。
世の中には、こんな劇団もあるんですよ。劇団って、本当に、十人十色なんですよ。じゃあもういっそのこと、ある特定の社会集団が「一定の人数で機能している」という条件だけで「劇団」と名乗っても誰も文句言わないんじゃないかと思うくらい様々なんです。
 

そんな今日は「唐十郎」のお芝居を見てきました。感想は近々書くかも、書かないかも。
PR

Post your Comment
Name
Title
E-mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
Trackback URL
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
フリーエリア
最新CM
[03/23 晴]
[03/23 ゆい]
[07/11 晴]
[07/10 ゆりか]
[07/09 晴]
最新TB
プロフィール
HN:
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
最古記事
カウンター
Script:Ninja Blog 
Design by:タイムカプセル
忍者ブログ [PR]